ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「横山さん、メガネは?」


やっと気づいてもらえたんだと知る。



(ウレシい……)


答えるよりも先に感情の方が動いた。
首を傾ける人に向かって、さっきよりも熱の籠った声を発した。


「イメチェンしてみようかと思って」


貴方の目に止まりたかったんです…とは言えないけど、その分声に思いを込めた。


「へぇー。確かにやっぱり違うな」


昨日見せた意地悪そうな笑みを返される。
ドキン…と弾む胸を確かめて、聞きたがったことを話した。


「羅門さんとは一緒に食事をしました。雑誌で見る有名なレストランで自分の味見に付き合うよう言われて」


「あいつらしいな」


クッと笑い声を立てる。何度か自分も同じ経験をしたことがあるように見えた。


「その後で少し言い合いになって。結局、ケンカしたままで別れてしまいました」

「あーーっ」


残念そうにも受け取れる声が室内に響く。
思うような関係になれなかったことを取り敢えずは謝ろうと思う。


「すみませんでした。折角ご紹介してもらったのに」


仲良くもなれずに怒鳴りつけてしまった。
後で冷静になって考えれば、あの男が言ったことは全て真実に近いものがある。



「私は……」


副社長のことが好きになり始めている。
今ここに二人きりでいる状況をケイに悪いと思いながらも嬉しいとさえ感じている。


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