ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
ハッと息を吸い込んだ。

目の前にいる男性が、怖いくらいに渋い表情を見せていたせいだ。




「……その先の言葉は聞かねぇでおくから」


短く答えを出されてしまった。
その瞬間、私の思いは完全に封じ込められてしまった。



「羅門が言ってたことはコレか」


悟ったように呟き、私の方を見返した。


「もし予想外のことを聞くことがあっても耳にするなと言われた。俺には守りたい人間が出来たんだから見誤るなって」


「守りたい人間……?」


震えてきそうな全身の神経を集めて聞いた。
泣きだしてはいけないと、心が叫び続けている。


「俺には大切な女がいるのは知ってるよな。そいつが俺のことを信頼しているんだから、俺はその気持ち以上でそいつを守ってやろうと決めてる。だから……」



「わかってます…」



「そうか」


わかっているけど、言いたかった。
何も変わらなくても、この感情を押しつけたかった。

この人の胸に縋り付きたかった。
あの日、彼に出来なかったことをこの人にすることで報われたいと願った。


ケイのことなんて考えずに。
自分の中にある孤独を癒したかった。

でも、それをしてはいけないと言われた。

昨日煽ってきた男からは今一度のようにクギを刺され、思いを告げたかった人からは、打ち明けることも許されない。



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