ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
(こんなドス黒い感情を持つ私に、神様が微笑むわけないんだ……)


あの日できなかったことを別の人でやり直そうとするなんてサイテー。

友人にできた彼を奪って、満足感や優越感にでも浸ろうとしたのか。

その後ろで誰かが泣いていたとしても無視をして、ただ、自分だけが笑っていれればいいとカン違いをしたーーー。




「バカでした」


こんな自分のバカさ加減に付き合わせてしまった人に、心から首を垂れる。


「私がやろうとしていたことは、ただの腹いせ行動です……」



惨めな自分を慰めたかった。
あの日切り捨てられた好意を、別の人との恋で生まれ変わらせようとした。


誰かを好きになりたいと思い続けてきた。

でも、その誰かは、紛れもない自分自身だったんだ……。




「ケイに……恥ずかしい………」



そう言ったところで、やっと涙がこみ上げてきた。
泣いてはいけないと言い聞かせてきた自分へのご褒美のようにどんどん涙が押し寄せてくる。



「謝っておいて下さい」


しゃくり上げながらお願いした。



「ケイに?俺から?」


驚くように聞かれる。



「……だって、私には顔も見せれないことです……」


グシッと涙を拭った。
一度だけ鼻を吸ったところで、「聖…」と呼ぶ小さな声を聞いた。



ビクン!と背筋の骨が凍った。
狼狽える私の前にいる人が、後ろのドアを指差す。


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