ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「クエ」


アヒルの鳴き声かと一瞬思ってしまった。
「クエ」が「食え」だというのに気づき、「あ…」と差し出された皿を見つめる。


今日は金曜日。
私はあのイヤーカフの男の店に招かれていた。



「何これ。シチュー?」


真夏にカレーは聞いたことがあるけど、ホワイトシチューというのは聞き慣れない。


「白紙に戻そうって意味だ」


白いコックスタイルの男はそう言って唇を尖らせた。


「白紙って何をよ」


スプーンを握りながらコックスタイルの男を見上げる。

どうして私がこの店に招かれることになったのか。
それは、あの大失態の日の夜に戻って説明する必要がある。


ーーーーーーーーーーー


『聖に会いたいんだって』


誰が…?と思いながらそうタイトルの付けられたメールを読んだ。


『羅門さんが聖に自分の料理を食べさせたいから、是非もう一度会いたいと言ってるそうなの』


「冗談は止めてよ」


液晶画面に呟いてスクロールすれば、次なる言葉が映し出される。


『この間は悪かった。本当に言い過ぎた。ごめん!』


「大輔さんが羅門さんに伝言して欲しいと頼まれたんだそうです?……あの人、きちんと謝れるのね」


可笑しくなって吹き出してしまった。
言い過ぎも何も、全部真実だったのに。


「えーと、何々?聖の好きな物を作ってくれるそうなので、私から幾つか情報を教えておきました。……ええ〜〜っ!?」


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