ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
呆気にとられてしまうほど美味しい。
何なんだ。この美味しさは。


「どうだ?」


この美味しさをどう伝えればいい?


「あんたって、天才?」


この間の店のよりも私の好みに合っている。


「天才か〜〜」


間に受けてるよ。単純な人。
でも。


「本当に天才かもよ!」


だって、ホントに美味しいから。


お腹一杯になりかけていたのも忘れて食べ続ける。
羅門は私から離れず、ずっと隣に立ち続けて見ていた。



料理は完璧だった。
感想を聞かれ、あれこれ迷ったけれどこう言った。


「優しい味がした。なんて言うか、また今度、他の料理が味わいたい気分」


嘘でもお世辞でもない。


「そんなに褒められたのは久しぶりだな」


満更でも無さそうな男の顔を見つめながらふぅ…っと短い息を吐いた。



「あの……」


声に出して顔を上げる。
髪の毛をバンダナで巻いた男の視線が、刺さるように降り注いでいる。


「この間は……ごめんなさい。貴方の言った通りだと思って、帰って存分に反省しました……」


肩を落として謝った。
怒鳴り散らしてばかりいた自分を情けなく思う。


「それでも告ろうとしたんだろ?」


ケイの彼に聞いたのか、ニヤついた顔つきで聞かれた。


「したけど、告る前に受け付けてももらえなかったわよ」


ははは…と乾いた笑い声を立てる。


「でも、それで良かったと思う」


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