ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
そんな私に預けられたこの身上書の二枚目には、こんな言葉が書いてあった。


『僕の趣味は将棋とチェスです。君のこともいろいろと知りたいので、今度一緒に食事してくれないか』


ハテナマークは付いてない。
それはつまり、断らないよなって意味合いのようにも受け取れ……。



「こ、断るでしょ。普通」


誰があんな社長と食事を共にするか。


「いやいや、それはあまりにも言い方が酷いかもしれないけど……」


私の勤めるオフィスは玩具を主に取り扱う会社だ。

『トーイ・トドロキ』というのが名称で、私はそこの社長付きの第二秘書をしている。

名前は片桐真綾(かたぎり まあや)24歳。

去年このオフィスに入り、直ぐに秘書として配属された。

秘書としての仕事が何たるかは、一応大学で一通り学んだ。

入社してからも第一秘書の宇田川さんに習いながら、とにかく確実に、着実に、社長を支え続けていくことを身に付けてきた。


「冷静沈着に、愛想良くして」


口を酸っぱくして言われ続けたのには訳がある。

うちのオフィスの社長、代表取締役の轟 祐輔(とどろき ゆうすけ)さんは、非常に喜怒哀楽が乏しい方だからだ。


そうは言っても一応の愛想笑いはできるし、それなりに商談なんかもこなしている。

ただ、ここぞという場面で深入りをしない性格なのか、時として上手く物事が運ばなくなる時がある。

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