ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
それを解消する為に…と代理(副社長)を頼まれているのが弟の大輔(だいすけ)さん。

この人はルックスも性格もお兄さんとは正反対で、陽気で明るくて人見知りしない。

所々に性格の粗野さが現れることもあるけど、人柄は決して悪くない。


そんな弟の人柄に助けられながら、新しい商談も上手く取り付けたりしている。

何も知らない上役達は、大輔さんのことを疎んじているようだけど、彼がいないと行き詰ることも多いんだってことを秘書の私が伝えたっていいくらいだ。



「何があったんだい?」


穴が開くほど手紙を見過ぎていた私に宇田川さんから声がかかる。


「いえ、あの、何でもないです」


まさか、トップから食事に誘われたとは言い難い。
大きな声を出して申し訳ありませんでした…と謝り、身上書と書かれた便箋を封筒にしまい込んだ。


そのまま1週間程度ムシをし続けた。

幸いなことに、社長はその事に関しては触れてもこず、知らん顔していればそのうち諦めて下さるもんだとばかり思い込んだ。
付き合っている人などいなかったけれど、社長とお付き合いしたいと思ったこともなかった。


企業のトップと恋に落ちる。
女子としての憧れに近い感情は私には皆無で、むしろ甘々に甘やしてくれそうなダメ人間を好きになってみたいと思っていた。


身上書を受け取り、週が変わった水曜日の午後、社長室に来るよう言われた。



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