ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
(何のコロン?)
窺うように見つめてしまう。
そんな私の目線は気にせず、社長は紙面に目を落としたままで聞いた。
「この検品課の乃坂さんというのは、確か君の同期だったよね?」
「あ、蛍のことですね。はい、そうですけど」
「この検品書類よく出来てる。図入りで解説されてあるから分かり易い」
「はぁ」
明らさまに社員を褒めるのなんて珍しいことだと思った。
「何で検品課の仕事なんてさせてるんだろう」
不思議そうに呟く。
その理由を私は何となく知ってはいるけど……
「社長」
今はそれよりも逃げだしたい。
「ん」
顔を上げた人と間近に目が合い狼狽えた。
これまではそんなに意識もしなかった人のことを、驚くほどしっかり意識した。
「私、仕事の途中なので下がります」
言い逃げるようにして頭を下げ、向きを変えてドアの外へ飛び出していった。
「はぁぁぁぁ」
ドアを背に凭れ、大きな溜息を吐く。
宇田川さんは会議の準備でいないから、そのまま安心して座り込んだ。
「何であんなに自己チューなの」
それはこの仕事を始めた頃から少しずつ思ってはいたことだ。
社長は独り善がりが多い時もあって、だからこそ理解され難い点もある。
間違ってはいない。
ただ、手段が乏しい。
人付き合いが苦手だからかな…と感じたことはある。
だからと言って、辞退権限まで取り上げられる覚えもない。
「何とか誤魔化して行かないようにしよう」
この時の私はまだ社長のことを何も知らずにいたんだ。
窺うように見つめてしまう。
そんな私の目線は気にせず、社長は紙面に目を落としたままで聞いた。
「この検品課の乃坂さんというのは、確か君の同期だったよね?」
「あ、蛍のことですね。はい、そうですけど」
「この検品書類よく出来てる。図入りで解説されてあるから分かり易い」
「はぁ」
明らさまに社員を褒めるのなんて珍しいことだと思った。
「何で検品課の仕事なんてさせてるんだろう」
不思議そうに呟く。
その理由を私は何となく知ってはいるけど……
「社長」
今はそれよりも逃げだしたい。
「ん」
顔を上げた人と間近に目が合い狼狽えた。
これまではそんなに意識もしなかった人のことを、驚くほどしっかり意識した。
「私、仕事の途中なので下がります」
言い逃げるようにして頭を下げ、向きを変えてドアの外へ飛び出していった。
「はぁぁぁぁ」
ドアを背に凭れ、大きな溜息を吐く。
宇田川さんは会議の準備でいないから、そのまま安心して座り込んだ。
「何であんなに自己チューなの」
それはこの仕事を始めた頃から少しずつ思ってはいたことだ。
社長は独り善がりが多い時もあって、だからこそ理解され難い点もある。
間違ってはいない。
ただ、手段が乏しい。
人付き合いが苦手だからかな…と感じたことはある。
だからと言って、辞退権限まで取り上げられる覚えもない。
「何とか誤魔化して行かないようにしよう」
この時の私はまだ社長のことを何も知らずにいたんだ。