ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
自分のことを特別視する二人に、社長からの誘いを受けているとは言いづらかった。
言えば自慢話のように受け取られそうだし、断り続けていればそのうち必ず諦めて下さる筈…と、信じていた部分もあったから。


「すみません、その日は母と買い物に行く予定があって」

「あっ、その頃は丁度祖母が家に遊びに来るので……」


家族を引き合いに出せば断り易いと思った。
私個人だけの予定ではないと思わせることで、社長からも大きな態度に出られないで済む。

三、四回はその作戦で上手く切り抜けた。
でも、五回目のお誘いを受けた時、さすがに先手を打たれてしまった。


「ご両親からは了承を得ている。娘をお願いしますと、丁重に頼まれた」


「………は?」


呆れたことに社長は私の家に電話をかけ、今晩一緒に食事をしたいが娘さんを誘ってもいいかと尋ねたそうだ。



「社長さんに言われたら断れないでしょう?」


呑気な母のセリフにものも言えず電話を切った。
どうすればいいのか悩み過ぎて、とうとう蛍と聖に打ち明けた。



「その相手ってオフィスの社長……なの?」


もしかして…という蛍の疑問から始まった言葉に頷いた。
どうやって断ればいいのか迷っていると話すと、聖は案外アッサリ受けてみた方がいいんじゃないかと言った。


「気の済むように相手してやればいいんじゃない?逃げたら余計に誘いたくなるもんでしょ」


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