ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「社員は将棋の駒みたいなものだよ」


言い切った人の目には、どこかダークな色合いが潜んでいる。


「私もなんですか?」と、思わず聞いてしまった。


「私も将棋の駒の一つですか?今日ここへ誘われたのは、そういう意味合いからなんですか?」


秘書としての役目はオフィス内だけではない。
社長がパーティーに参加した時の見守り役としては勿論、プライベートな夜のお誘いを受けることだってないとは言えない。


「まさか。個人的な意味合いで誘ったと言ってるだろう」


それも正しくその方面だけが目的のように聞こえる。


「私がオフィスで秘書に配属されたのは何故ですか?」

「君が優秀な秘書になれると思ったからだ」

「私は、優秀でもなんでもないですけど」


言い張るように言葉を返した。
社長は私を上から見下ろすような感じで眺め、ふぅーと長い息を吐いた。


「謙遜ならしない方がいいな。そんなものをしていると、自分の能力がどんどん低くなってくる」

「能力…?」


思わず箸を置いてしまった。
この人は能力とかいうものだけで、人事を動かしているのか。


「できることをできるようにさせてやる。持っている力を引き出せるようにするには、自己評価を高くさせなくてはいけない。
謙遜はその上で邪魔なものだ。せずにいられるのならしない方がいい」


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