ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「自信家になれという意味ですか?」

「自信がつくように働けばいいという意味だ」



何だか訳がわからなくなった。
目の前にある食事はどれも美味しいのに、だんだん喉を通らなくなってしまった。



(最初のうちは楽しいと思ってたけど……)


社長のダークな部分に触れ出したら、一気に気持ちが沈んでいった。

お陰でその後は一切、オフィスでのことには触れずにおいた。

食事を済ませた後、軽く飲まないかと誘う社長の申し出を断り、そそくさとタクシーを捕まえて帰った。


家に帰った頃、聖から『どうだった?』とメッセージが入り、『不思議な気分がした』と送り返した。




『楽しくなかったの?』


頭の上にハテナマークを付けたクマのスタンプが付けられている。


『楽しか…ったのよ。最初はね』


それがどんどん急降下していった。
社員を将棋の駒のように見ている社長のことが、どうしても許せないような気になった。


『真綾でも緊張するんだ』


驚きの顔をしたクマのスタンプ付き。


(緊張した?……ううん、何だか切なくなったんだ……)



『疲れたから、またね』


聖のコメントには答えず、布団の中で眠るウサギのスタンプを送り付けた。

聖からは『お疲れさま』と、労いの言葉が届いた。


(うん。疲れた……)


胸の中で返事をして、スマホを手の平から零れ落とす。


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