ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
声だけでなく、車内の空気までもが重くなるトーンだった。
弟の話がダメとなると、同じ様に両親のお話も聞けない。


私が知っている社長のことと言えば、あの身上書とかいう手紙に書いてあることだけれど。


(あれも全部まともに読んでないよね)



月曜日にオフィスへ行ったら読み返そうと決めた。

その後は海辺のカフェに立ち寄り、美味しいコーヒーとケーキセットを食べて家に送られた。


社長の車で帰ったと話すと、母は会いたかったのに…とブツブツ小言を言い続けた。
人付き合いが苦手そうな人に家族と会わせるのも嫌だろうと思い、気を使って家の近くで降りたんだ。


「今度またお食事に誘ってもらった時にでも会わせるから」


そう言い訳したけど、社長は別れる時に「また」とは言わなかった。
「ありがとう」とだけ言い、それから「また月曜日に」とだけ言葉を交わした。


あーあ…と半ば不貞腐れがちに部屋の畳の上に転がった。
君の宝物は何かと聞かれた時、一番最初に思い浮かんだのはこの部屋のこと。

和室の八畳の部屋は私の一番の宝物。
どんなに寝転がって行儀悪い格好をしていても、誰にも怒られないし見られないから気楽。

畳の上で手足を伸ばすのも、動かすのも自由自在。
夏は拭き上げた畳の上に転がってクーラーの風を浴びながら寝るのが最高の楽しみで、冬はコタツを出して中でゴロゴロしまくる。




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