ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
やだなぁ…と一人でカン違いをして赤くなる。
劣等感の塊みたいな蛍は、私からすると可愛くて仕方ない。

クスクス笑いながらそういう意味じゃないと教えた。
あれこれと話をしながらオフィスへと向かう。


聖から社長とのことはどうなってるのかと聞かれた。
先週の土曜日に一緒にお蕎麦を食べに行ったことは、既に二人に教えてある。


「あれからはお誘いも何もないよ。やっぱり聖が言ったように気が済んだのかもしれないね」


一度付き合って貰えれば良かったのかもしれない。

そう思わない日々ではなかったけど。


「何?もしかしてつまらないって顔?」


覗くように瞳を近づける。


「まさか。相手はオフィスのトップだし」


そのトップを最近抱きしめたくなるんだとは言えなかった。
たった一度や二度の食事に誘うくらいで、どうしてあんな身の上話が書かれた手紙を渡してきたのかというのも謎なままだ。



「また誘われたら応じるの?」


蛍の顔つきは心配そうだった。
自分だったらとてもムリだと話していたから、そんな顔をするんだろうと思う。


「んー、どうかわからないけど……でも、もうきっと誘いもないと思うから……」


身上書を読んでそんな気分がしていた。
社長はこの間、私が声を上げて笑ったことに懲りているんだと思う。


誰かと深く付き合うのは嫌だという感じに取れる内容が書かれてあった。
そのことを思い出すと、私はきゅんと胸が切なくなるーー。


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