ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
立ち入るようなことを聞いてしまった。


「何が?」


社長は欠伸を噛みながら答える。


「だって、これまでは一度だってなかったですよね!?社長が直に案件の処理をすることなんて」


経営上の数字に関することは経理部に任せておけばいいし、商品に対するクレームなら社長が処理をしなくても、管理部や商品開発部が請け負えばいいことだ。


「人事的に何かありましたか?」


社員を将棋の駒と同じようなもんだと言い切った言葉を思い出していた。


「どうしてそんなことを気にする」

「だって、社長が泊まり込んでいらっしゃるのなんて初めて見たから……」


不安を表に出してはいけなかったはずなのに、この1週間誘われもせずにいたことで、それが増幅してしまっていた。


「会社、大丈夫なんですか?」


デスクに近寄って聞き直した。


「社長がお泊まりにならなければいけないくらい、不手際なことでも発生したの?!」


こっちは必死で聞いているのに、社長はぽかんと口を開けているだけ。



「社長!どうにか答えて!」


どうしてこんなにせっつく様に言ってしまったのか。
社長のことを抱きしめてあげたいとばかり考えていたせいだろうか。



「落ち着けよ」


キィ…と椅子から立ち上がった人がデスクを回り込んできた。

「でも…」と言い出す私のことをふわっと優しく抱きしめる。


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