五月雨物語
恐る恐る聞く。

なんだかすごく・・・

近くにいる気がしたから。

「いや、仕事はするな、って

言われたんだけど、やっぱね、

週末なのにみんなに迷惑かけて

やばいなって思ってさ。」

「んで?」

「今、店の近くにいるんだ。

お客こないから別にいいんだけど

どうせ出てきちゃったしさ

キャッチでもしようかと・・・」

「会える?」

「え?」

「会える?今から。」

思わずあたしは言ってた。

手には二ヶ月前にもらった

塁の名刺を握り締めて

店の裏の狭い非常階段を

駆け下りていた。
< 42 / 240 >

この作品をシェア

pagetop