五月雨物語
「バイクね~、

俺の唯一の脚だったのに。

ぶっ壊れちゃったよ!

まじで、あり得ね~よ。

足も、ギブス取れるのに

三週間はかかるってさ。」

この時怪我をしていなかったら

きっと、その辺の壁か電柱を

塁は蹴っ飛ばしていたんだろう。

塁の家は少し遠い。

塁は朝、実家から学校へ行き

授業を受けてから、そのまま

店の近くの満喫で仮眠を取って

夜中から仕事に出ていた。

バイクがないとそれもできない。

いや、あったとしても、

この足じゃ無理だ。

朝までの仕事を終えて帰りに

意識が朦朧として

商店街のシャッターに

ぶつかったらしい。


沈黙が、辺りを包んだ。
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