五月雨物語
「俺、聞いてないし。」

ナオがあたしにウインクした。

パニくってる塁を無視して

軽快なコールが流れ始めた。

マイクを向けられた塁は

しどろもどろで

あたしとナオを見ながら

「えーと、俺何がなんだか~」

「はい、

ユラちゃんのき~も~ち~は?」

と、ナオ。

「塁くんのために~!」

ジャンジャカ、ジャンジャカ!!

「モウイチド!」

「塁の幸せのために~!

大好きだよっ!」


塁は目をまん丸にして

あたしをじっと見た。


「塁くん、最後に~!」

「ありがと~! ユラ。

そして、みんな。

俺、俺、がんばりますっ!」

真っ赤な顔をして叫んだ塁を

私は一生忘れない。
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