五月雨物語
「俺ね~

来月いっぱいで店辞めようと

思ってるんだ。

3年生になったら

もっと忙しくなるし。」

「え~?学費はどうすんの?」

「一年間だけは

親に世話になるしかないね。」

「そうなんだ~。」

あたしは、ふと年の離れた

弟のことを思った。

弟は私立高校を出て

今年から大学に通い始めた。

うちは、お父さんが学費を

全部だしてくれてる。

それが、当たり前だと思ってた。

なのに、目の前の塁は

ちゃんと自分の力で生きている。

偉いな~と改めて感じた。

人は

最初から与えられているものを

当たり前と思って、感謝しない。

こうして、比較対象があってこそ

自分の幸せに

気づくことができるんだと。

そういう意味でも

塁と関われたことを

ありがたく思った。
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