子供達は夢を見ない
「彼等はより強い戦力を欲しがった。そこで考えた。『国を二つに分けて常日頃戦いをさせようではないか』とね」

「信じられない…」

「だけど、ただ戦をしても何時か反乱が起きるのは目に見えている。だから、二つに分けた。エンチルにとってマッドは悪。マッドにとってエンチルは悪と言う認識を持たせたの。マスグはいわゆる憩いの場として残った…」

「何でそんな過去を知ってるの?」

「…あたしはマスグ軍最高司令官の娘なの」

「!?」

「戦が起きると直ぐにあたしは他国に亡命した。そして帰って来た時には…」

「二つに別れていた…」

「そう。彼等にとってあたし達はただの駒に過ぎないって訳」

長い沈黙が流れた。
今まで信じて来た物が崩れたのを感じた。

「まだ諦めるのは早いよ」

「?」

「あたし達は中立軍マスグを復活させてる途中なの。あたしの裏切りに気付いてる人達も居るからなるべく早く行動したいんだけどね…」

「復活?」

「今一度中立軍マスグが居た国に戻そうとしてるの。そこで貴方達に話がある。このままエンチルに属するか、マスグ軍に来るかのどちらか」

「…」

「大丈夫よ。エンチルに残ると言っても撃ったりはしないから」

「俺は…エンチルを抜ける…」

恩田が言った。

「あたしも」

前木が言った。

「…僕も行きます」

羽根田が言った。

「…ありがとう。詳しい話は羽根田君のパソコンにデータを送るよ。…今日はもう遅い。部屋に戻った方が良いよ」
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