テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
『俺たちは今から、ロシアンシュークリームをやります。
4個あるシュークリームのうち、一つだけわさび入りです。
さて、わさびシュークリームを選んでしまう確率はいくつでしょう?』
あ、これなら分かる。
「4分の1!」
『あたり!確率はみんなこんな感じだよ。同じ要領でこれもこうして…』
画面が澪君から数式の並んだノートに切り替わる。
次々と赤ペンでポイントが加えられていく。
さすが有名私立大卒なだけあって、教え方も先生より上手だった。
それより、好きな人の言うことはどんなに難しいことでもすんなり頭に入ってくる。
授業開始3分後にはいつも眠くなるのに、澪君の解説は眠くならなかった。
時計の針が12時を指した頃、私は確率の基礎をほぼマスターすることができた。
「忙しいのにありがとう」
澪君は満足げに鼻の下をこすりながらにこにこ笑っていた。
『いーのいーの。
紘那ちゃんと話せて楽しかった!
またわからないとこあったら聞いてね』
澪君と私はあくびをかみ殺しながら「またね」を言って、ビデオ電話を切った。
澪君のことがますます好きになっていく。
私は布団に潜り込んで目を閉じた。
瞼の裏にはさっきの笑顔の澪君。
心地よい満足感に浸りながら、私はそのまま眠りに落ちた。