テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
『目的地に到着しました』
地図アプリの案内が終了した。
見上げるといつかの小柄なマンション。
あの時は暗くてよく分からなかったけど、壁はベージュで塗られていて、なんだかドールハウスのような可愛らしさがある。
私はエレベーターに乗り込むと4階のボタンを押す。
私以外誰もいないエレベーターは、止まることなくゆっくりと上っていった。
澪君の家の扉の前。
澪君との指切りの感覚を思い出して、胸がきゅんとなる。
またここに来れるなんて…
ピンポーン
チャイムを鳴らすとすぐに、『はい』とインターホンから澪君の声が聞こえた。
「夏村紘那です!」
私は少し上がり気味でそう答えた。
ぱたぱたと廊下を走る音がして、扉は開いた。
笑顔の澪君がそこにはいた。
細く開けられたその隙間から私はするりと玄関に入り込む。
「やったぁ紘那ちゃんだぁ」
澪君は顔をほころばせて私を見つめた。
それから私の手に提げられた箱やらビニール袋やらを見て、「それ、どうしたの?」と首を傾げた。
「えと、この前借りた服と、それと少しだけどこの前のお礼…かな」
私はそう言って手に持っていた物を澪君に渡す。
「えぇ?これ返さなくてよかったのに。
……ってあ!!!これ俺が好きなケーキ屋さんの箱だ!!」
澪君は私が2番目に渡した箱を手にすると、目をキラキラと輝かせた。
私は靴を脱いで玄関に上がりながら頷く。
「雑誌で澪君のことならほとんど知ってるから!」とは口が裂けても言えない私は、「そうなんだ!偶然だね」と適当に笑って誤魔化した。