テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「気に入ってくれてよかったぁ」
澪君はそう言ってキッチンに立った。
赤く塗られたやかんに水を入れて火にかける。
「そういえば、紘那ちゃんは何言おうとしたの?」
突然私の番が回ってきて、頭が真っ白になる。
「あ、前話してたゲーム。対戦できるように持ってきたよ」
ソファにおろしたカバンを見つけて、やっと話したかったことを思い出した私。
澪君の前だとどうしても余裕がなくなってしまう。
「ほんと?やったぁ」
澪君は嬉しそうに笑いながら、私が買ってきたケーキの箱を冷蔵庫にしまった。
「紘那ぁ」
パタンと冷蔵庫の扉が閉まる音がしたあと。
冷蔵庫の方を向いたままの澪君が、情けない声で私を呼んだ。
呼び捨てにされて、少し心臓が跳ね上がる。
「なに?」
澪君の背中に向かって私は言った。
こちらを振り返った澪君は寂しそうな、でも何かを決意したかのような、なんとも言えない顔で私を見つめていた。
涙で潤んだ瞳が私を映す。
私の心に期待と不安が渦巻く。
「俺さ…」