テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
ピンポーンピンポンピンポンピンポーン
澪君が何かを言おうとしたその瞬間、けたたましいインターホンのチャイムが鳴り響いた。
「なになになに!?」
慌てて玄関を確認しに行く澪君の顔は、もう今日会ったばかりの時と変わらない様子に戻っていた。
一体なんだったんだろう。
何が言いたかったんだろう。
チャイムの音を煩わしく思う一方で、心のどこかで安堵する自分がよく分からない。
「なんでお前ら来てんだよ!!!」
玄関から聞こえてきたのは澪君のちょっぴり怒った声。
「だって澪ちゃんおらへんとつまらないんやもん。せっかくみんな揃ってオフやのに、澪ちゃんだけ欠席とか許さへんで!」
明るい関西弁が玄関から全部聞こえてくる。
もちろん、私はこの声に聞き覚えがあった。
コンサートのトークの時間。
テレビ番組のMC。
人を惹きつけるこの喋りの調子…。
間違いない。
真壁春翔…。
Shootingの盛り上げ役。
大阪出身の春翔君の方言にメロメロなファンも少なくない。
「そーそー!!それに俺、久しぶりに澪ちゃんのご飯食べたいなぁ」
次に聞こえたのはShootingのリーダー。
阿久津蒼悟の声。
「蒼ちゃん」の愛称でファンから慕われる彼は、グループの一番人気だ。
誰が聞いてもとろけそうな透き通った声が柔らかく響く。
「俺も俺も。澪ちゃんのくるみのパスタ食べたい」
今度はまひるちゃんの大好きな川島悠。
ものすごくクールなイメージだったのに、意外にもフレンドリーな話し口調で私はちょっぴり驚いた。
「ちょっと!勝手に上がるなって…もぉぉぉ」
最後に聞こえたのは澪君の声。
それから勢いよくリビングの扉が開いた。