テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「ぼーっとしてると指切るよ。明日撮影なんだから、怪我したら怒られるからね」
蒼が俺の肩をぽんぽんと叩く。
俺はぷいっと顔を背けた。
だって、やっと紘那のことを連れ出せそうだったのに、蒼が邪魔したから。
俺は結構根に持つタイプだ。
「そう機嫌悪くするなって。俺だって何も考えないでお手伝いに立候補したわけじゃないよ」
蒼の言葉に、俺は皮むきの手を止めた。
顔を上げて、蒼を見る。
眉を八の字にした蒼がこちらを見つめていた。
白っぽいキッチンの蛍光灯が、やけに眩しく蒼を照らしていた。
「なぁ。
…好きなんだろ。あの子のこと」
少し声のトーンを下げて、「あの子」こと紘那を顎で指す。
「好きだよ。大好き。」
別にもうばれてもいいと思っていた俺は素直に認めた。