テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

「澪ちゃん、料理人の役やるんやで!恋愛ものやねんけど、相手の子が今話題の倉持緩(くらもちゆる)ちゃん!!すごない??」


「もぉー。春、喋りすぎ」


澪君は、ばれてしまったことをいいことに、ペラペラとドラマの内容を話し続ける春翔君の口を後ろから両手で押さえる。
春翔君は口をもごとごさせながらも、まだ何かを喋り続けていた。

恋愛ものなんだ…

ドラマの共演から交際に発展する…という話はよくあることである。
だから、私は澪君を取られちゃうような気がして不安なのだ。
自分の澪君でもないのに、図々しい考えなのはよく分かっている。
でも、もし本当にそうなってしまったら、私はきっと、もう生きていけないくらいに落ち込んでしまうだろう。
澪君だって人間だから恋していいはずなのに、本当なら、ファンである私は澪君の恋を応援して喜んであげなくちゃいけないはずなのに、私はそれができない。
ちっちゃいなぁ、私。
なんだかそんな自分が嫌になるけれど、それだけ私は澪君が好きなのだ。
それに間違いはない。


「俺、別に女優とか興味ないから」


澪君はぷいっとそっぽを向いた。
「またまたぁ〜」と春翔君はしつこく澪君をいじっている。


「そんなこと言うといて、知らんうちに付き合ったりしてはったら俺泣くわぁ」


泣き真似をする春翔君に半ば呆れながら、メンバーたちは食べ終わった食器を片付け始めた。
私も一緒になって動き出す。

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