テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
文化祭

「おはよう」


月曜日の朝。駅のホーム。
だいぶ久しぶりの無愛想な声に、私は振り向いた。

気まぐれで緩く巻いた髪が、私の動きに合わせてふわりとなびいた。


「お、おはよう」


相手は予想通りのいくまる。

相変わらず怒ったような、機嫌の悪そうな顔をしている。

今日は両耳にイヤホンをはめたままこいくまるは、両手をポケットに入れて、そのまま黙り込んでいた。


「何聞いてるの?」


大きな口であくびをかますいくまるに、私はなんとなく聞いた。
何も話さないで電車を待つのも気まずかった。


「ん」


いくまるは私の方に体を向けて、イヤホンの片耳を私に差し出した。


「え?」


身長が伸びることを期待して買ったのだろう、いくまるのダボダボな制服のジャケットの袖から覗く、真っ白な指。

私はおそるおそるイヤホンを受け取ると、右耳にはめた。


この曲…!!


耳に馴染んだメロディー、声、リズム。


「Shooting…?でも、なんで?」


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