テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
電車に揺られながら、今日の朝の小テストの勉強をする。
ただのアルファベットの羅列が並ぶ参考書に目を落とすけれど、なんでだろう。
集中できない。
早く言わなきゃだめだ。
付き合えないって、ちゃんと言わないと…そうしないと中途半端になってしまう。
いくまるの気持ちも傷つけてしまう。
でも、塾で気まずくなるの、嫌だなぁ。
さっきの、気づかなかったこと…いや、なかったことにできないかなぁ。
…できないよなぁ。
対向する電車とすれ違う音が私の思考を邪魔して消えていった。
私と同じ制服の女の子が、いくまると同じ制服の男の子をつついて笑い合う。
窓から差し込む白い光に照らされて、眩しく輝く笑顔に、私は見入ってしまう。
ふと、昨日のことを思い出して、体が熱くなる。
ふわりと抱きしめられたあの感じ。
吸い込まれそうな瞳。
柔らかい唇。
どんどん顔が火照っていくのを感じる。
1人で赤くなるなんて馬鹿みたい。
引け!熱よ引け!!
「ちょっと、紘那突然赤くなってニヤニヤして…声掛けにくいよ」
はっ!
顔を上げると顔を引きつらせた紗乃。
「あ………」