テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「えぇ!?澪君と付き合いだした!?」
文化祭の準備が真っ最中の放課後。
私は紗乃に本当のことを話した。
隠しごとをしてもどうせすぐバレる。
それで喧嘩になるくらいなら話しちゃった方がいいに決まってる。
紗乃は口も堅いし、澪君には後でちゃんと説明すれば大丈夫。
ところが紗乃は、私の言葉に困った顔で「夢で?」と返した。
いつも私の妄想や夢見がちな言動にクギを刺すのは、現実主義者の紗乃の仕事だった。
高校に入学するときも、少女漫画のような世界に憧れていた私に紗乃はよく忠告してくれた。
きっと、それで私が落ち込んだり、傷ついたりするのが見ていられないんだと思う。
「違うよ、本当なの」
私は「シーッ」と人差し指を口元に当てながら、ひそひそと答えた。
特別等の階段の踊り場は、文化祭準備期間なのにも関わらず、何もない異空間のようにしっとりと静まり返っている。
「いい加減、しっかりしなよ」
私より背の高い紗乃は、ゆっくりと首を傾げた。
あ、私、今呆れられてるな。
「たとえ本当にそうだったとしても、最後は紘那が傷つくことになるんだよ」
「知ってる…」
「相手は芸能人なんだから、いつも周りに可愛い女優さんとか、モデルさんがたくさんいるんだよ?
誰と噂になってもおかしくないし、いつその中の誰かに流れてもおかしくないの。
突然振られたとしても、紘那はまた普通に澪君のファンに戻れるの?」
諭すような紗乃の言葉。
私は少し考えて、小さく横に首を振った。