テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
まだShootingの目撃情報をやり取りし合う声が、あちこちで聞こえる。
もういないのに、バカみたいだ…なーんて内心で思ってみる。なんだか優越感を感じた。
聞き慣れた音楽が、メインステージの方から流れ出した。
あ、この曲。
なーちゃんの好きな曲だ。
毎日踊ってる、あの曲だ。
幼い頃からダンス一筋のなーちゃんを知っている私は、夢を現実にしていくその姿に憧れを感じていた。
少しずつだけど、一生懸命努力して、周りに認められてきたなーちゃん。
やっぱり私の自慢の従姉妹だ。
「見にいく?」
ぼーっとメインステージを眺める私に、紗乃が聞いた。
紗乃の指は、私の視線の向こうを指している。
「うん…でも、紗乃、彼氏とは一緒に回らないの?」
紗乃に向き直ると、彼女はバツが悪そうな顔をして、私から目を逸らした。
あ、もしかして………
「振られちゃったんだぁ。この前」
紗乃は、へへへと、らしくない顔で無理に笑う。
やっぱり。
「私の心配性は疲れるって言われちゃった」
寂しそうに下を向く紗乃。
バカな男だな。
紗乃は、好きな人にほど心配性を発揮する。
つまり、愛されてる証拠なのに。
それに気づけなかったんだから、もはや紗乃と付き合う資格なんてないよ。
思ったことを口にするのは、まだ100年早そうだったから、私は「紗乃の心配性は愛なのにね」と一言だけ、音を持つ言葉にした。
私と紗乃には、これで十分なんだ。