テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
私たちは2人で、人が溢れかえったメインステージのたもとに向かった。
観客の頭越しに、軽快に踊るなーちゃんの手や頭が、ちらちらと見えた。
さすがなーちゃん、大盛況である。
盛り上がる観客の歓声に圧倒されながら、携帯を開いた。
届いていたのは一通のメッセージ。
『脱出成功!またね!』
澪君だった。
澪君はきっと、2人で会っていたのを見られたことを知らない。
そいつに、私がキスされたことも知らない。
告白されたことも知らない。
そう考えるとだんだん後ろめたくなってきた。
ずっと憧れていて、夢にまで見た大好きな人と、運命の巡り合わせで付き合っているのに。
私は確かに何もしてない。
悪くない。
でも、もう少し早く、いくまるの気持ちに気づいて、もう少し早く断れてたら?
今思えば、いくまるは何度もサインを出していた。
いつも塾のあと家に送ってくれるのも、お出かけに誘ったのも、傘に入れてくれたのも、きっとそう。
それでも気づかない私に、「そろそろ気づけよ」と大ヒントまでくれたのに。
だって、まさか私だと思わないじゃん。
澪君にちゃんと話した方がいいのかな。
でも、話したら嫌な思いする?
分からなきゃ、今のままでいれるよね。
だけど、私、後ろめたくて、会うのが辛くなっちゃうかも。