テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「うぁ、剥けない…っ!」
不器用な私が包み紙と格闘していると、「ほら、貸して」と紗乃が手を差し出してくれる。
私は紗乃のアイスを預かり、自分のアイスを手渡した。
「はい」
ほんの数秒で返されたアイスは、一口かじった跡があった。
私も紗乃のかじっとけばよかったとちょっぴり後悔。
まぁ、さっきのお礼ってことで。
ベンチに座り、冬には冷たすぎるアイスを少しずつ口にする。
こんな寒い日に外で震えながらアイス食べてるの、きっと私たち2人ぐらいだよ。
「紘那が澪君のこと好きになったきっかけは知ってるけどさぁ」
不意に紗乃の口から漏れた「澪君」というワードに、私はキョトンとしてしまう。
「なんで澪君は紘那のこと、好きになったんだろうね」
確かに。
そういえば、まだちゃんと聞いてない。
あの日、駅で声をかけてくれたのは、澪君の気まぐれだったのかなぁ。
もしそれが私じゃなかったら、どうなってたんだろう…。
考えるだけで恐ろしい。
「なんでだろうね」
足をパタパタと揺らしながら首をかしげる。
私にも分からなかった。
今度会ったら聞いてみよう。
あ…次会えるの、いつだろう。
先日出たドラマの予告で、女の子たちにキャーキャー言われながら囲まれるシーンを思い出して、また寂しくなる。
「私の澪君に近づかないで!」なーんて、言えるわけないし、言ったところで澪君を困らせるだけだ。
でも、そういうシーンを見るのが辛い。
ごめんねって、澪君は謝ってたけど、やっぱりなぁ。
冬のアイスは溶けにくい。
時間が経っても体温で垂れることもなく、しゃんと棒に刺さっている。
「はぁ」
無性にでたため息は、乾燥した空気にあっという間にしみ込んでいった。