テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

「あぁ!澪くぅん。どこ行ってたんですかぁ?」


う、嫌いな声。
妙に高く、甘い喋り口調が俺を呼び止める。
共演者の倉持緩は、かなり苦手だ。
自分のことが好きで好きで仕方がないといったオーラと、たまに垣間見える腹黒さには、もう懲り懲りだった。
一度倉持緩と共演経験のある蒼は、俺に「気をつけろ」と言っていた。
それなのに、こんなに大人気なんだから、テレビって怖い。
そして、こんな相手にキスをするのも癪である。
とりあえず、早くクランクアップしたいというのが今の本音。

何も答えない俺に、倉持は鋭く俺の持つショッパーに気づく。


「あ、このブランド!緩が好きなブランドですっ!まさかぁ、私へのプレゼントですかぁ?
やだぁ、緩人気者ぉ」


身をくねらせながらへらへら笑う倉持。
俺は、「ごめん、違うから」と残し、監督のところに行くそぶりをした。


「照れなくていいのにぃ」


そんな俺にひょこひょこついてくる倉持に、俺はため息をつくことしかできない。


「女の子のブランド物だよぉ?そろそろクリスマスだし、ふふふ。
ふぅーん彼女でもいるのかなぁ。
バレたらどうなるんだろうねぇ」


悪態をつき始めた倉持はマネージャーに止められて、文句を言いつつも仮設の椅子に座った。

嫌な感じ。
白いショッパーをもう一度見る。
紘那の喜ぶ顔が浮かんできて、少しずつ心が落ち着いていく。

ーー紘那、喜ぶかな…?

早く会いたいなぁ…そんな気持ちを懸命に堪えて、俺はもう一度、台本に目を落とした。


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