テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
紗乃から1日早い誕生日プレゼントをもらっても、なんだか心のどこかに、ポカンと穴が開いてしまったみたいにうまく笑えなかった。
クリスマスイブなのにバイトだという紗乃とは駅で別れ、私は1人、家路を急ぐ。
家に帰ったら、ココアでも入れてゆっくりお茶しよう。
この前お母さんが買ってくれたクッキー食べよう。
そしたら年越しライブの衣装作らなきゃ。
カサカサと紗乃からもらったプレゼントの包装紙がかすれ合う音に耳を傾けながら、私はいろいろなことを頭に巡らせる。
澪君のことを思い出して寂しくならないように。
冬になって、さらに立て付けの悪くなった引き戸を開けた。
硬いもの同士が擦り合うような、嫌な音に顔をしかめ、玄関に上がった。
ん…?
見つけたのは綺麗に並べられた黒い靴。
なんだか高そうな、この辺じゃ履いてる人もいなさそうな、おしゃれな靴。
お客さんかな…?
訃報かと思った。
私は黒い靴から少し離れたところにローファーを脱ぐと、リビングに向かった。