テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「なんで笑うんだよ〜」
ぷくっと頬を膨らませながら、澪君はキャップを自分で被った。
それから、澪君は私に向き直ると、もう一つのキャップを私に被らせてくれた。
「どう?似合うかな?」
私は首を傾げた。
「やべぇ」
澪君はそう言って顔を真っ赤に染める。
「な、なに…?」
「いや……想像以上に可愛すぎた」
斜め下を見ながら指で鼻の下を擦る澪君は完全に照れてしまっていて可愛い。
「これは買いだな、買い!」
澪君は照れ隠しをするように、無駄に大きな声を出してそう言うと、私のキャップをそっと脱がせてくれた。
彼は私の少し乱れた髪を手櫛で直してから、自分のキャップも脱いで、嬉しそうにレジに向かっていった。
もちろん、手は繋いだまま。
「澪君、私も払うよ。なんか悪いよ…」
私が財布を出す前に、お会計を終えてしまった澪君に縋るように私は言った。
澪君はチケット代も、夜行バス代もみんな出してくれている。
なんでもかんでもお金を払わせてしまうのは、とても申し訳ない。
「俺が欲しくて買うんだからいーの!紘那は高校生なんだから、そういうことは気にしない気にしない」
澪君はそう言って私の頭をポンポンと撫でてくれた。
値札を外してもらったキャップを澪君に被らせてもらう。
「うん、やっぱり似合ってる」
澪君があまりにも嬉しそうにはにかむから、私は何も言えなくなってしまった。