テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
……ろうそく?
それはケーキの上に揺れる小さなろうそくの炎だった。
運ばれるケーキのクリームやイチゴを暖かい色で照らす炎に、私はぼんやりと見惚れた。
そして、ハッピーバースデーの音楽が流れ始める。
澪君が歌い始めると、店員さんも、周りのお客さんも、みんな声を一つに曲を作り上げていく。
私は目元が熱くなるのを感じた。
私の前に置かれたケーキのろうそくのせいなんかじゃない。
こんなサプライズ、初めてで。
すごくすごく嬉しくて仕方なくて、涙が止まらない。
これは幸せの涙だ。
「紘那、誕生日おめでとう。…ふーってして」
澪君に促され、私は思い切り空気を吸い込んで、ろうそくの火を消した。
ーーいつまでも澪君と一緒にいれますように。
そんな願いと一緒に。
店内が真っ暗になると、周りのお客さんは一斉に拍手をしてくれた。
少しして、店内にはあの暖かい光が戻り、お客さんたちも、それぞれの食事に戻っていった。
そうか。澪君がそわそわしてたのって、もしかしてこれがあったからか。
成功するか心配して落ち着きのなかった澪君。
思い返すと、愛おしくて、愛おしくて、私の胸はきゅんと音を立てた。
「ありがとう」
そう言って微笑んだ瞬間、私の両目から残っていた雫がこぼれた。
澪君は少し照れくさそうに前髪をいじっている。澪君らしい。