テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
ーー9時から花火が上がるらしい。
「いい場所があるんだ」と言う澪君に連れられて、少し人気のない道を進む。
私はされるがままに手を引かれ、目的地も聞かされないまま、歩き続けた。
「今日楽しかったね」
澪君が言った。
「うん。今までで1番いい誕生日だった」
「でしょ?有言実行だからね、さすが俺」
「ふふふ、自分で言う?」
「言っちゃった。……でもひとつ、忘れてない?」
「ふぇ?」
思わぬ言葉に私が間抜けな声を発した瞬間、パァァァンと真っ赤な花火が夜空を彩った。
赤い光が澪君の頬をほのかに照らす。
「あー、間に合わなかったかぁ」
澪君はそう言いながら私に向き直った。
周りに人はいない。
このパークに、そんな場所があったなんて。
澪君は、コートのポケットにおもむろに手を滑らせると、小さな白い箱を取り出した。
私は首を傾げる。
「誕生日プレゼントは、さっきもらったよ?」
私がそう言うと、澪君は大きな手のひらで、私の頭をポンポンと撫でた。