テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
隙間風
「ただいまー」
高校の課外から帰ってきた私は、居間には寄らずに急いで自室へ向かった。
今日はこれから塾。
学校の課題が多すぎて、まだ塾の宿題に手をつけられていないのだ。
荷物をベッドの上にどかっと置いて、机のライトをつけた。
カバンから必要なものを取り出して、椅子に座る。
「あ。」
あの日…12月25日の澪君と私の写真が目に入った。
最近、100円ショップで買った木製フレームの写真立てに、お気に入りの写真を入れて部屋に飾ったのだ。
もちろん、クリスマスツリーの前で撮ったあの日の写真。
あの日はとても素敵な日だった。
二人で花火を見終わったあと、私たちはパークを後にした。
次の日から仕事で、私を家に送れない自分の代わりに、澪君は妹を呼んでいた。
駅で初めましてをした澪君の妹さん「東雲卯月」は、澪君にそっくりの目が愛らしい、とても綺麗な人だった。
スタイルだって、すごくいい。
「紘那ちゃんだ。お兄ちゃんからよく聞いてるよ、可愛い彼女だって。私は東雲卯月。うーちゃんでいいよ」
彼女は気さくにヘラヘラと笑いながら私の手を取る。
「変なこと教えんなよ」
じろりとうーちゃんを睨みつけながら澪君は言った。
「いひひ。紘那ちゃん、ガールズトークしながら帰ろ?ほら、メンズは帰った帰った」
手でしっしという仕草を見せるうーちゃんに、澪君はため息をつく。
「…大丈夫。私が責任を持って送り届けるから。お兄ちゃんは心配しなくていいよ」
うーちゃんが澪君にこそこそと囁いたのが、冬の夜風に乗って聞こえた。
帰り道、うーちゃんは澪君の昔の話、自分が大学生であること、澪君の芸能活動のおかげで相当な苦労をしたことなど、いろいろなことを話してくれた。
楽しかった。
うーちゃんは、今度、私をショッピングに連れて行くと約束して帰っていった。
なんだか、姉ができたみたいで嬉しかった。