テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
暗闇の中に消えていくいくまるを見送ったあと、私は家に入った。
食欲はなかった。
私はしばらく部屋に閉じこもっていたが、なんとなくなーちゃんに話を聞いてもらいたくなって、なーちゃんの部屋を覗きにいった。
ノックをしても返ってこない返事でやっと思い出した。
なーちゃんは一昨日から、ダンスのイベントで台湾に行ってしまっていたのだった。
私はまた部屋に戻り、ベッドに突っ伏した。
カチカチと時計の鳴る音がやけにうるさく感じた。
思い出すのは澪君の笑顔。
このまま、相手の女優さんの方に行ってしまったらどうしよう。
もしそんな風になるなら、そうなる運命なんだったら……
澪君になんか、出会わなきゃよかった。
ブーッブーッと机の上で携帯の鳴る音がした。
この長さ、誰かからの着信だ。
私は重い体を持ち上げて机に歩み寄り、画面を見た。
『澪君』
きっと、私に伝えたいことがあって、電話をしてきたのだろう。
もちろん、伝えたいことというのは、あの雑誌のこと。
「ごめん、別れよう」
電話を取ったらそう言われそうな気がして、怖くなって、私は彼からの着信を無視することにした。
私は再びベッドに戻る。
何度も何度も鳴り続ける着信音が聞こえないように、私は布団の中に潜り込んだ。