テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
【Mio Side】
事務所に呼び出されて行ってみれば、この話だ。
俺は所長に見せられた雑誌を手に呆然とした。
やられた。
これしか言葉は浮かばなかった。
俺はこの写真に心当たりがあった。
待ち遠しかったクランクアップの日、俺は仕事の付き合いもあって、内心嫌々ながらに飲み会に参加していた。
本当はすぐにでも家に帰って、紘那と電話がしたかった。
途中、みんなが二次会の会場に移動するというので、俺は明日も朝が早いからと訳を話し、家に帰ることにした。
俺は一人でさっさと帰ろうと、軒を連ねる店の電気でまだ明るい夜道に出た。
その時だった。
「東雲くん」
名前を呼ばれた。
この声、間違いなく倉持緩だった。
「緩、お酒弱くて酔っ払っちゃった。おうちまで送ってください」
彼女は俺にふらふらとわざとらしい足取りで近寄り、俺の腕を両手で掴んだ。
「困ります。俺、帰らないと」
倉持の腕を振り払い、歩き出そうとする。
「彼女に会うの?…大丈夫。緩は優しい子だから、バラしたりなんかしないよ。…バレないようにしてあげる」
意味深な言葉を残して、倉持は店内に戻っていった。
この時は気づかなかった。
倉持に腕を掴まれたほんの一瞬の間に写真を撮られてたなんて。