テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
俺たちは、『倉持緩』と書かれた張り紙を見つめた。
蒼が俺と目を合わせ、それからノックをしようとして…やめた。
中から話し声が聞こえてきたのだ。
『聞いてる話と全く違うじゃないか。俺は、そちらの事務所でデビューとテレビでの売り込みを約束してくれるというから手伝ってやったんだ』
俺はこの声に聞き覚えがあった。
そして、同時に信じたくないと思った。
『だから、お金で支払うって言ってるでしょ。所長にダメって言われたんだもの、仕方ないわ』
『お金じゃねぇんだよ。俺は有名になりたいんだ』
『じゃあもっと面白いネタ考えなさいよ。こんなつまらない人間、使いたいなんて思う番組、一つもないわ』
『お前……俺は友達を売ったんだぞ?』