テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「ゲーム、好きなの?」
ぼんやりとゲームの棚を見ていた私に気づいたのか、澪君が聞いてくる。
「好き…です!」
「えぇ!そうなの!?趣味が合うねぇ」
澪君はソファから立ち上がるとあるゲームのパッケージを片手に戻ってきた。
「このゲームだけ、クリアできないんだよ。俺ね、結構深刻な方向音痴で…いつもは蒼君と一緒にやるんだけど、あいつ最近忙しくてさぁ」
渡されたゲームのタイトルを見る。
あ、これなら既にクリアしている。
「私に少しやらせてくれませんか?少し力になれるかもしれないです」
方向音痴ということは、きっと最後のダンジョンで迷子になったに違いない。
このシリーズのRPGはラストダンジョンが格別に難しいと有名だ。
「え、いーの?」
目をキラキラと輝かせる澪君。
「はい。澪君はお風呂入ってきちゃってください」
私はなるべく自然に笑って見せた。
大好きなアイドルを前にすると眠気は全く訪れない。
それが功を奏している。
澪君はプラットフォームのゲーム機を私に渡すと、「お願いしまーす」と手を振りながらバスルームへ消えていった。
決してないと思っていた出会い。
せっかく会えたんだから、これを機になるべく仲良くなっておきたい。