テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

みんなで打ち上げをした後、電車で東京に帰ろうと駅のホームに入った俺は、コンサートの「指差して」の子を見つけたのだ。


なんだか涙目で様子がおかしかった。


時計を見て、終電を逃したのかもしれないと思った。


ライブには遠くから来てくれる人もたくさんいるのを、俺はよく知っていた。


そして、その子を見て見ぬ振りをするという選択肢は俺にはなかった。


でも、そのまま話しかけるとただの不審者になりかねないため、俺も終電を逃したことにしたのだ。



いくら人気がないといっても、女の子と歩いてる姿を写真に撮られたりなんかしたらShootingのメンバーに迷惑がかかる。

せっかく有名になってきた今、そんなことで世間を騒がせたくない。


それなのに、
放っておけばよかったのに、
知らないふりをすればよかったのに、
そうできなかったのはなんでだろう。


髪を滴るお湯がぽたぽたと足元に落ちる。
俺はシャワーの栓を閉めると、バスタオルを頭からかぶった。


まさかな…
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