テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
sweet time

電車に乗って花屋敷の最寄り駅、浅草駅へ向かう。

そのまま帰れるように、手には昨日の大きなライブグッズ…はなかった。

澪君が何も言わずに手を差し出して、持ってくれたのだ。


理想の彼氏像だよ、やっぱり。


昨日と同じ黒いハットを被った彼は涼しげな顔で流れる景色を眺めている。

メイクをしていないすっぴんの素顔も本当にかっこいい。


澪君が出てるテレビの中に迷い込んだみたいだ。



『Next station is ”Asakusa”,”Asakusa”.』



駅のアナウンスに顔を上げると、金属製の柱に寄りかかっていた澪君も同じように顔を上げるのが見えた。
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