テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「紘那ちゃんいい笑顔。
別に緊張しなくていいよ、友達なんだから。
あと敬語禁止!」
携帯電話をポケットにしまいながら彼はふにゃっと笑う。
緊張しないなんて無理がある。
でも、それに気づいてその緊張を和らげようとしてくれる澪君の優しさが温かい。
「ありがとう」
「いーえっ」
彼から渡された乗り物券を手に、私はマップを睨む。
どれに乗ろうかな。
「これ、俺絶対行きたい!」
彼が指さしたのはお化け屋敷。
花屋敷のお化け屋敷って怖いので有名じゃなかったけかと冷や汗をかきつつ適当に頷く。
顔を上げると左手には白鳥の乗り物。
「あれに乗りたい」
私は思わず指差す。
「いーよ!行こ行こ!」
順番が来るまでの少しの間、澪君との他愛のない話を楽しむ。
係りの人に案内されて、一台の白鳥に乗り込む。
少し不安定に揺れる乗り物。
彼はさっと優しくエスコートしてくれる。
差し伸ばされた手に掴まって、私は転ぶことなく座席に座った。
ただ水の上をぐるぐる回るだけのアトラクション。
でも、隣に座る澪君は「わー!」とか「きゃー!」とか言いながら子供のように楽しんでいる。
そんな姿を見ていると、私も自然に笑みがこぼれるのだ。
あぁ、だめだ。
ますます君が好きになっていく。
せっかくなれた友達なのに。