テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
外に出ると少し冷たくなってきた風が私たちの間をすり抜けていく。
時計を確認すると、時間は既に15時を回っていた。
そろそろ帰らなくちゃいけない。
日が暮れるまでに帰らないと、本当にまずい。
「もう、時間?」
私の時計を一緒に覗き込みながら澪君は言った。
「うん、そろそろ」
私は頷いた。
「そっかぁ」
寂しそうに出口へと向かう澪君の足は、妙にゆっくりだ。
楽しい時間は本当にあっという間だった。
友達…と言っても、次にいつ会えるか分からない。
だって相手はテレビの中のアイドル。
スポットライトの中のアイドル。
元はといえば、私に手の届くはずがないくらい遠くにいる人なんだ。
それが運命のいたずらという偶然によって今隣にいるだけで、所詮一般人とアイドル。
その距離が縮まったのは一時的なもので、さよならをしたら元の距離に戻る。
当たり前のことだ。