テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「なんか嬉しいことあった?」
シラーっとした目で私を見つめるいくまる。
「いくまる」は私が勝手につけたあだ名である。
夜の虫が鳴く塾の帰り道。
暗いところを1人で歩かせるのは不安だからと、いつの間にかいくまるが私を家まで送ってくれるようになった。
「え、分かる?」
男の子なのに私とそこまで背の変わらない彼は「顔に書いてある」と言いながら自分の顔を指差す。
「ライブにね、当たったのだよ」
とびきりの笑顔でピースする私。
「あぁ、Shootingの」
「そうそう!最近人気出てきたから倍率上がっちゃって大変なの」
スキップがちに歩く私を相変わらず呆れた目で見つめるいくまるは大きくため息をつく。