テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「私さ、」
意を決して私は昨日のことを話しだした。
「駅で電車待ってたら、寝ちゃって終電逃しちゃったの。…現金持ってなくって、どうしようって途方に暮れてたら、澪君が声をかけてくれたの」
私はなーちゃんの方を見た。
なーちゃんは少し首をかしげて、「澪君って…もしかしてあれ?」と壁に貼られたあるポスターを指差した。
私は頷く。
「嘘ついちゃだめだよ」
やっぱり信じられない…か。
私自身、自分でも最初は信じられなくて、夢かと疑ったくらい。
それを他人がストレートに信じられるわけがない。
いくら私のことを大切に思ってくれる親戚だとしても。
黙りこむ私に、なーちゃんの表情は少しずつ変わっていった。
「え、なに。まさか…本当なの?」
大きな目をさらに大きく見開いて、なーちゃんは私を振り向く。
「本当だって言ってるじゃん。……それで、私を見かねた澪君が、家に泊めてくれたの」
昨日とは打って変わって聞こえる虫の声。
他にはなにも聞こえない。
ぽかんとしたなーちゃんはふぅっと息をついた。
「そんなことって、あるんだねぇ」
感慨深そうに呟く。
どうやら信じてもらえたようだ。
「私もびっくりしたもん」
すぐ近くにいた澪君の温もりを思い出して、私はまた寂しくなった。