テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「それにしても帰ってくるの遅かったじゃん。なにしてたの?」
なーちゃんは立ち上がり、食べ終わったアイスキャンデーの棒をゴミ箱に捨てに歩く。
「澪君が…花屋敷連れてってくれた」
私のか細い声になーちゃんは勢いよく振り返った。
「デートじゃん!!!」
「声大きいよ!!!」
昔から少しうるさいなーちゃんは、気を抜いたり、驚いたりするといつもこう、大きな声になってしまうのだ。
私は慌てて、なーちゃんを落ち着かせる。
お母さんに聞こえたら大変だ。
「デートじゃないよ。……ファンサービス、だよ」
囁くように私は言った。
そうに決まってる。
「でもさ、普通は出かけなくない?
そもそも困ってる人を放っておけないからって、普通は高校生の女の子を家に連れてこないでしょ。
だって、アイドルだよ?」
なーちゃんは眉間にシワを寄せながら考えるようにして話す。
「私がアイドルだったら、どこか泊まれる分のお金だけ渡すけどね。
だって自分の住んでる場所とかがばれたらまずいし、世間の目も怖いし…東雲澪もそう思ったはずだよ」