テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
私……澪君に本気で恋していいかな。
ファンの枠を飛び越えて、友達という境界線をくぐり抜けて、澪君のかけがえのない存在になりたい。
図々しいのは百も承知。
澪君の半径30センチの中に入れたらな。
隣の部屋から、なーちゃんが踊る足音と、音楽が漏れて聞こえてくる。
窓から入るひんやりとした風が、雑誌のページをパラパラと捲っていく。
何処かへと消えて無くなってしまった風。
捲られたページには澪君の笑顔。
そこには澪くんのインタビューが一緒に綴られていた。
『俺は偶然なんて無いと思うんです。
俺たちの身の回りで起こること全ては、絶対何かが起こるためのきっかけなんだって。
だから、出会いを大切にして、何にでも全力で挑戦したいんです。』
それはまるで、風が私に大切なことを気づかせてくれたようだった。
『俺さ、駅で会ったこと、偶然じゃないと思うんだよね』
今朝、聞いたばかりの澪くんの声が耳に蘇る。
偶然なんて無い…か。
だったら私と澪君との出会いも必然なのかな。
そうだといいなぁ。
相変わらず続く、なーちゃんのダンス練習の雑音が、やけに遠くに聞こえた。