テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「澪ちゃん、最近さらにぼーっとしてるね。どしたの?」
小難しそうな本から顔を上げた悠が眼鏡越しに俺を見つめる。
「五月病?」
「何言ってんねん!蒼!!
今、十月やで?五月病にかかるアホ、どこにおんねん!」
蒼のボケに、いつも通りキレのいい春のツッコミが入る。
「なにか悩み事でもあるの?」
本に栞を挟んでカバンに片付けながら、悠が俺を覗き込む。
「んー?あぁ、最近寝不足で。ドラマの撮影始まるし」
俺は適当な嘘をでっち上げてへらっと笑った。
「なんや!そんなことかぁ!
俺、ドラマの経験ないから分からへんけど、あれやろ?澪ちゃんは理系やから、きっと台本なかなか覚えられへんのとちゃう?」
「そーそー」
春の言葉に便乗して俺は頷いた。
別にそういうわけでもないけどね。
「えーなぁ、俺らも早よドラマデビューしたいわ。なぁ、悠?」
「だな」